きみをおもう、
そりゃあ、初めはそっくりだって思ったさ。小首を傾げる仕草とか、顔を前に出して覗き込むようにオレを見る所とか。
けどそんな意識はすぐに吹き飛んだんだ。
だってスノウは魔法が使えるし、リボンを付けてるし、それに……。
言葉じゃ上手く説明できないけれど、彼女と小雪は違う。
同じだけど、同じじゃなかったんだよ。
桜が降る。メルへヴンから帰って来たあの日のように。
夜空から春なのに雪が降ってきた、あの日のように。
『ギンタ!』
ギンタの記憶で、頭にリボンを結んだ少女が笑った。
氷の中から目覚め、目が合った時間。初めてのキス。
くるくる変わる表情。強くなろうねと微笑み、握られた手。
消えちゃえばいいんだ、私なんて…と呟いた小さな声。
涙を流しながらの「大好き」の言葉。
……同じだけど、同じじゃなかったんだよ。そんなの、当たり前じゃないか。
「……ギンタ?」
桜吹雪の中足を止めたギンタを、小雪が心配そうに呼ぶ。
近付いてきた彼女の身体を、ギンタはぎゅうっと抱きしめた。
花びらを乗せた風が二人を包む。
突然の行動に小雪は戸惑うが、抱き締められるうち、彼の心情を理解したように面差しを和らげる。
ゆっくりと微笑んで、小雪は彼の背に手を回した。
「………大丈夫だよ、ギンタ」
小雪の体をかき抱く力が強まる。
「“私”は、ここにいる」
唇を噛み締め、一筋だけ涙を流しながら、ギンタは彼女の短い髪に顔をうずめた。