太陽の言葉、月の想い
ソウマ君は、優しい人だった。
戦うことを躊躇う私を、彼は無理に戦わさせようとはしなかった。
パートナーの心を武器にして戦う心剣士だから、当然の事なのかもしれないけど。彼はいつも私に気を配ってくれた。
戦いの時は、私の盾になってくれて。
戦いが終わった時は、迷わず傍へかけ寄ってくれた。
あまりにも自然で、さり気ない仕草だったから。ありがとうを言う機会すら、私は見つけられなかった。
『自分の気持ちに素直になれよ』
傾いた陽射しが照らした顔に、私は彼が全てを知っていることを悟った。
私が奥底に隠した本心を。彼以外の人を想っていることを。
でも彼は、私にそれを感じさせることなんて微塵もなかった。
いつも守ってくれて、気遣ってくれて。
『俺は心剣士として巫女を守るんじゃない。クレハだから守るんだ』
あなたを、好きになれたなら良かった。
貴方の思いに、戦う決意が芽生えたのは本当。
貴方になら、私の心を預けても良いと思えたのも本当。
貴方がいなかったら、私は迷うだけで、きっと守りたいものすら守れずにいた。
……私に強くなるための言葉をくれたのは、彼でない、貴方。
だから、
「……行かせてあげて」
「でも……」
だから、貴方がこの世界で進む道を選んだこの時。
私にできる、精一杯の笑顔で見送るね。
貴方から貰ったものと、教えてくれた強さ………忘れないから。
「頑張ってねー、ソウマー! 私たちも元の世界で頑張るからー!」
「__ああ!」
シーナさんの言葉に振り返った彼の表情は、眩しかった。
ソウマ君、
貴方の優しさが、
… きだったよ。
END
ソウマとクレハは、実はすごく似てる性格だと思います。
一見軽そうで実は繊細な思いを秘めてるソウマと、本心を決して悟らせず、常に一歩引いた所から輪に加わっているクレハ。
優先してるものは、常に自分以外のもの。
二人が中心の章「太陽の心、月の剣」は、二人が表裏一体であることをよく示したタイトルだと思います。
……個人的にクレハには、キリヤよりソウマとくっついて欲しかったです。
クレハがキリヤを好きな理由が、私には未だによくわからないんですよね。
多分シンパシーとか(従兄弟だし)、彼らも似た物同士(二人とも博愛主義者)というのが理由なのでしょうが。
ゲームEDのクレハとソウマのやりとりを見ると、「君ら実は好きあってるんじゃないの?」なんて感じてしまいます。
クレハの最後の言葉は「好き」です。はっきり表さないのは、彼女がそれを認めることを罪だと感じてるから。
キリヤのことが好きなのに、ソウマに対しても好きと思うのは、二人(特にソウマ)に申し訳ないという意の現れ。
時折自分の気持ちを出さず押し殺してしまう所が、ソウマもクレハも、良い意味で日本人的なキャラクタ-と思います。
……と、色々勝手な考察をしてしまいましたが、お楽しみ頂けるものであれば幸いです。
ご拝読下さり、有り難うございました。
2012.6.10